眩暈(めまい)・メニエール病と漢方薬

めまいの背景には意外な病気も?

 めまいにもいろいろな症状や原因疾患があります。多くは耳鼻科領域の異常ですが、1割程度は中枢神経系の詳しい検査治療が必要なものであり、時には脳の血流変化を生じる循環器や血管異常に起因するものなど、見過ごしてはいけない情報が隠れていることもあります。これまでに詳しい検査を受けたことの無い方は、耳鼻科から循環器科まで広い範囲の専門診療科の先生のご判断を頂けるような環境で、きちんと精査することが第一選択です。

 しかし一部ではありますが西洋医学ではどれだけ調べても原因不明とされたり、原因となる変化はわかっても治療方法が不明だったり治療薬の効果がでにくい患者様もおられます。ここでは症状のタイプごとに詳しく調べるべき基礎疾患と、漢方薬での治療方法についてご紹介いたします。詳しくなりすぎないようにいたしますが、一部用いるカッコ内の言葉は中医学の専門用語です。

1 回転性めまい:グルグル回る感覚

 耳の奥にある三半規管の機能異常による症状です。メニエール病(メニエル病)や前庭神経炎、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、突発性難聴など、めまいの原因の多くの割合を占める耳鼻科領域の疾患が主な原因となります。例外もありますがまずは耳鼻科で詳しい検査を受けましょう。

 中医学では、「水(すい)」「津液(しんえき)」という体の中のさらさらした液状のものが滞って老廃物である「痰」になり、「風邪(ふうじゃ)」という体の上部や表面で素早く移り変わる特徴のある悪影響と結びついて、「風痰」となり身体機能の秩序をかき乱す状態が代表例です。半夏白朮天麻湯や釣藤散などが「痰」「風邪」に対応する代表方剤ですが、慢性的に不調が続く患者様では、「津液」の処理能力低下や、体の中からコントロール異常が生じる「内風」などの原因がベースになっていることもあり、複数の要素を総合的に治療できる煎じ薬での治療が有利です。

2 浮動性めまい:ふらつく・失神しそうになる

 前庭障害などのほかに中枢神経系の原因も考えられる症状です。耳鼻科領域の疾患、小脳・脊髄・末梢神経の障害、ほかにも全身的には薬剤の副作用や心因性のものまで多岐にわたります。耳鼻科以外の診療科目もあるある程度の規模の病院で詳しい検査を受けましょう。

 中医学では、「気」「陽」というエネルギーの不足・「血」「陰」という物質的な不足から生じる症状で、いわゆる虚弱体質に伴うめまいです。「血虚」には当帰芍薬散、「陽虚」には真武湯などが代表方剤ですが、補う治療だけでは追い付かない場合や投薬を中断するとまた虚弱な状態が現れる場合には、ご自身でエネルギーや栄養を産生する力そのものを底上げする治療も必要になります。

柔軟性のある治療が多様な病態に対応

 上で例に挙げた以外にも多くの基礎疾患の可能性があるめまい。原因不明とされている患者様の中には非常にまれな難病などが診断を付け切れていない方もおられるかもしれません。そして一方では病名が確定しても、体質の面からみれば実は様々な問題点が複雑に絡み合っていることもありますので、専門的な知識のある医師が処方する漢方薬という選択肢も検討していただければと思います。